人形豆知識|端午の節句と菖蒲
端午の節句に欠かせないアイテムと言えば、「菖蒲」です。
ここでは、菖蒲が端午の節句に用いられる由来をご紹介します。
菖蒲の言い伝え「薬」と「邪気祓い」
菖蒲は古くから漢方名「白菖」としてもおなじみです。
端午の節句は「薬の日」ともされており、平安時代、端午の節句に天皇が部下を率いて大々的に薬草を採取する「薬狩り」を行う風習があったことからきています。
採取した薬草には、菖蒲や蓬(よもぎ)など、端午の節句に欠かせないものがたくさん混じっていました。
薬に用いられただけでなく、厄払いの力があると信じられてきた菖蒲は、平安時代からとても重宝されていました。端午の節句に菖蒲を髪飾りとして邪気祓いをする風習があり、天平時代には、上皇が、
「最近は五月の節句に菖蒲をかずらにする風習が廃れてきている。今後は、ちゃんとこの風習を守らない者は宮中に立ち入り禁止だ」
という詔を出したとか。
このように、平安で端午の節句に欠かせなかった菖蒲は、武家社会に入ってから「尚武」「勝負」に通じる縁起物として更に意味を担っていきます。
端午の節句と菖蒲の風習あれこれ
菖蒲合(あわせ)
平安の頃、端午の節句に行われた遊びで、菖蒲の根の長さを比べ合い、歌を詠みあって勝敗を決めた遊び。「菖蒲」は「尚武」「勝負」ということで、端午には武人たちが菖蒲を冠にかざして技を競い合う風習がありましたが、勝負がつかない時は菖蒲合で勝ち負けを決めたとか。
菖蒲打ち
こちらも端午の節句の遊びで、菖蒲の葉を地面に打ち付けて、先に切れた方が負けというものです。
菖蒲酒
菖蒲の根を浸した酒で、端午の節句に邪気祓いとして飲んだものです。
菖蒲の枕
平安時代、端午の夜に、邪気祓いとして枕の下に菖蒲を敷いて寝た風習。
軒菖蒲(のきしょうぶ)
端午の節句に軒下に菖蒲をさし、邪気祓いとしたものです。
薬玉(くすだま)
運動会などで目にするくすだまですが、もとは邪気祓いとして用いられたものです。
香りの強い植物を玉にして袋に入れ、表面に菖蒲や蓬を添えて五色の糸を垂らしたもので、端午の節句に室内や身にかけました。
「薬玉」とはその名の通り、薬草を用いた「薬の玉」の意で、病を遠ざけるとされていました。